エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
「ヤケ酒って、どうやったらいいんでしょう。酔いつぶれるまで、ひたすら飲む?」
「酔っ払って、言えなかったこと全部吐き出すとか?」
――言えなかったこと、全部。
あの状態で、私は直樹さんに何を言いたかっただろう。いっぱいあるはずなのに、上手く言葉は見つからなくて、まずは簡単な悪口を口にしてみる。
「……直樹さんの、ばかー」
ちょっと棒読みになったそのセリフを聞き、高野先生が顔をくしゃっとさせて笑った。
「悪口にしちゃかわいいな」
「女ったらし。すけべ。ヘンタイ」
「たらしは違いない」
彼が相槌を入れてくれるので、段々と調子が出てくる。
「私の青春返せー!」
案外、ありきたりな言葉しか出てこないものだなと思う。だけど、内容なんてなんでもいいのだ、きっと。
吐き出して、吐き出して、吐き出して――。
忘れなければ、ずっと苦しいままだ。だって、どんなにひどい扱いをされても、今の直樹さんを好きな気持ちは掻き消えたけど、長い年月想った記憶がそう簡単には昇華してくれない。
「初恋だったのに。ばかあ……っ」
三つ目の缶チューハイを全部、飲み干した。それをテーブルの上に置き、自分の膝の上に突っ伏す。
「……初めて好きになった人だったの」
高野先生の、合いの手が聞こえなくなった。