エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
「えっ?」
それは、飲み会がまだまだかかりそうということだろうか。それとも、病院の方で何か会ったのか。受持ちの患者さんの容態が急変して、ということは今までにも何度かあった。
どういう意味だろう?
尋ねるように首を傾げても、高野先生は答えてくれない。そのくせ立ち去りもしない。
どうしたものか。
対応に悩んでいたその時、スマホが短く振動した。メールが来たのだとわかって、ほっとして画面に視線を落とす。直樹さんだと期待したからだ。
「あ……」
表示された文面に、思っていたよりも気落ちしてしまう。
《悪い! 病院に戻らないといけなくなった》
続いて《ごめん》という意味合いのスタンプ画像が送られてきた。
「……ああぁ」
仕事なのだから仕方ない。患者さんが優先で当然だ。わかっているけれど、仕事が終わってからずっと外で待っていた身としては、かなりショックだった。
だったら最初から家に帰っていればよかったのだけど、直樹さんが早く抜け出してくる時もある。つい、気が急いてしまったのだ。
あからさまに落ち込んで見えたんだろう。
高野先生が、眉を顰めて低い声で言った。
「伊東先生?」
「はい。やっぱり来られないって……心配な患者さんがいたんでしょうか」
仕方ないですよね、とどうにか笑顔を取り繕う。しかし彼は目を伏せて、返事の代わりに思いがけないことを言った。
「食事は?」
「え?」
「待ってたんじゃないのか」
一瞬何を聞かれているのかわからなかったけれど、どうやら私がご飯も食べずにここで待ちぼうけていたと心配してくれたらしい。