エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける


「なら、送る」
「えっ?」

 改札を抜けた私の後に、高野先生も続いていた。本当に送るつもりのようで、隣に並んで歩き始める。慌ててとんでもないと片手を横に振った。

「そんな! 大丈夫です、数駅くらいだし」
「数駅だけなら大して時間ロスにもならない」

 なるよ!
 もしも反対方向とかなら、行って戻るだけでも数十分かかる。

「高野先生、どちら方面ですか」
「こっちのホームで合ってるよ」

 本当に?
 私が歩いている方へついて来ているようにしか思えない。しかし、わざわざ方向を偽ってまで私を送ろうとする理由はないのだ。本当に、彼の言う通り方角は合っているのかもしれない。

 困惑しながら隣を歩く高野先生を見る。すると彼は少し肩を竦めて、ちらりと周囲を見渡した。

「この時間になると酔っ払いが多いんだ」
「はあ……」

 大体、飲みに行った人たちが帰り始める時間だ。言いたいことはわかるし、確かに改めて周囲を見れば酔って賑やかなグループもいたりする。

「あんなところで何時間も突っ立ってたら、危ない。せめて、待つ時は店の中で待った方がいい」
「ちゃんとお店にいたんですってば。そろそろかなって出て来ただけで」
「本当に?」
「本当ですよ。どうしてそんなに疑うんですか」

 そんなに危なっかしく見えるのだろうか。これでももう二十五歳になるのだけれど。

 話している間にホームについて、ちょうど電車が入ってきたところだった。

「……何度も、見てるしな」
「えっ?」

 アナウンスと大きくなった電車の音で、声が聞き取りづらい。聞き返したけれど、止まった電車のドアが開いて会話は中断された。

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