エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
数人、降りてくる人を待ってから高野先生に促されて電車に乗る。ドアの近くの手すりに誘導されてから彼を見上げると、眉を軽く上げて笑う。ちょっと意地悪な表情に見えた。
「伊東先生、大好きでたまらないっていつも顔面が語ってる。飲み会の間、外で忠犬みたいに待ってるんじゃないかって思ったら当たってた」
ぽかん、としばらく固まっていた。
なんということだろう。意地悪なのは表情だけじゃなくて、言葉もだった。しかも、間違ってない。ずっと外だったわけじゃないけど、うきうきして家に帰らずこうして病院の近くまで来てしまっている私は、忠犬と言われても仕方ない行動だ。
恥ずかしい。だけど、そんな意地悪な言い方をしなくてもいいじゃないかと、思うと徐々に顔の中央に力が入る。きゅっと唇を結んで、上目遣いで高野先生を睨んだ。
「馬鹿にしてますか?」
「いいや。健気で可愛いなと思って見てる」
目が意地悪なままだから、そのセリフも当然からかっているようにしか聞こえない。ふいっと顔を背け、窓の外を見て言い返した。
「どうも。伊東先生もそう言ってくれるので」
待っていると、直樹さんがとてもうれしそうにしてくれた。私はそれがうれしかったから、いつのまにかこうやって待つのが習慣付いた。忠犬と言われようが、納得してやってることだ。
窓に映る私の顔は、完全に拗ねた顔をしている。左斜め上に高野先生の顔も映っていて、そこに焦点を合わせた時、どくんと心臓の鼓動が跳ねた。
……え。
高野先生の目は、まっすぐ私に向けられている。