エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
啄むだけの優しいキスを三度繰り返し、その間ずっと顎に触れた指が肌を撫で摩っている。それがとても、くすぐったい。
「ん……先生、くすぐったい」
普通に言うつもりだったのに、自分でもわかるくらいに甘ったるい声が出た。ほうっと熱い吐息がふたり分、混じり合う。直後、ぎゅっと頭を抱きかかえられた。
「……その、先生っていうの。こういう時に呼ばれると、ちょっと変な気になるな」
「え」
「次までに、別の呼び方考えといて」
ぽん、と頭のてっぺんに手が乗った。それから「おやすみ」ともう一度、今度は額に口づけられる。
「おやすみなさい」
「ちゃんと鍵かけてな」
見送ろうと思ったのに、彼は私を中に押し込めて玄関ドアを閉めた。言われたとおりにカシャンと鍵をかけると、それでやっと彼の靴音が遠ざかっていくのが聞こえる。
その音が消えてから、私も部屋の奥の窓へ走る。カーテンを開けると、駅の方へ歩いていく背の高い後姿が見えた。
――高野先生が、私の恋人。
遠くなっていく背中が、見えなくなるまで私は窓に張り付いていた。