エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
「じゃ、そろそろ行くわー」
「うん、お仕事頑張って」
レジで精算して店を出て、病院へ向かう彼女を見送ろうとしていると、スマホの着信音がバッグから響いて来る。
確認すると、高野先生からだった。
「わあ。見計らったようなタイミング……」
サチが頬を引きつらせて笑っている。
「今日、夕方サチと会うって約束してるの、知ってたからだよ」
「うん、だから夜勤の看護師が出勤する時間を計算してかけてきたんでしょ。あんたが家に帰っちゃう前に」
あ、そうか。なるほど……。
「じゃ、お邪魔虫はお仕事行きまーす」
いちいちからかわれては赤くなる私を置いて、サチは仕事に向かった。私は、高野先生のマンションのある方へ足を向けながら、スマホの画面をタップする。
私だって、もし帰るより先に高野先生が目を覚ますようだったら、会いたいなと思っていた。
『もしもし。後藤さん?』
「はい。先生、起きれたんですね」
『結構前にね。そろそろ永井さんと別れる時間かなと思って』
やっぱり、サチが言った通りに見計らっていたようだ。
「はい、今カフェを出て別れたとこです」
『何か食った? よかったら、飯でも行くかなと思って』
「いえ、私は食べてなくて……あ」
話ながら歩いていると、前方から私と同じようにスマホを耳にあてて歩いてくる人がいる。高野先生だ。