愛され王女は王の道をゆく
 振り返れば、アナスタシアがすれ違いざまに突っ込んできた暗殺者を、一振りで斬り伏せていた。切られた二人の亡骸は、勢いそのままに後ろへと飛んでいく。


「どうして、逃げられないか。分かってるんじゃなくて?」

「何故だ……飾り姫は治癒魔術の使い手とは聞いていたが、剣術どころか何故、結界術まで扱える!?」

「別に王族が複数の魔術を使うのは変ではないでしょう? 私の曽祖父・魔帝アーノルドがいい例ね」


 数代前の国王であるアーノルド・ヴァン・クウォールは、剣の才は全く無かったが、異能の一つとされる魔術の才に恵まれ、他国の戦争を乗り切った英雄王の一人だ。

 数多の魔術を扱い、自ら魔術師団を率いた彼に並ぶ魔術師は、当時いなかったらしい。

 故に付いた名が“魔帝”。

 その知識を偶然にも継承したのが、アナスタシアだったのだ。


「剣が折れたのもそれか」

「そういうこと。身体強化に結界術。
 初歩的な魔術だけど、極めれば中々凄いでしょ?」


 ソードブレイカーとは、本来であれば細剣などの細い剣を折り、反撃するための短剣なのだ。

 しかし、暗殺者が持っていた騎士剣は、普通は折れないほどに芯は分厚く硬い。
 それが折れたのは、身体強化による怪力の所為だ。

 つまり、力技で折ったのだ。

 また、見えない壁とは、アナスタシアが生み出した結界だった。
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