愛され王女は王の道をゆく
 リィンが抱いた不安は正解であった。

 翌日、普段では考えられないほどに遅く起きたリィンは、食堂で変な視線を多数感じていた。

 視線の多さに気分が悪くなり、早めに食堂を出ると、通路の端で足を止めた。

 城の掃除をしている侍女たちの話し声が聞こえたからだ。

 普段であれば、足を止めたりなどしないリィンだったが、この時ばかりは止めずにはいられなかった。

 話していた内容が、どうやらリィンに関係しているようだったからだ。


「それにしても、あのリィンさんが身を挺してアナスタシア王女殿下を守るなんて」

「いっつも無表情だから、ちょっと怖かったけど、そう聞くとカッコいいよねぇ……」

「相手は六人だったらしいけど、無事に撃退して王女を守りきったんだって。
 その時の傷の所為で、流石にしばらくは訓練に参加出来ないみたいだけどね」


 それを聞いてリィンは、ばれない様にその場を足早に去った。

 急いで部屋に戻ると、扉を締めて頭を抱える。


(色々、尾ひれが付きすぎだろう!?)


 リィンは今回の一件、守るどころか守られた側である。

 アナスタシアが一人であれほど動けると思わず、気が逸れた結果、暗殺者に遅れを取ったが、本来であれば遅れを取るような相手ではない。

 とはいえ、これは名誉の負傷とは言えない。

 尻拭いをアナスタシアにしてもらったからだ。
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