初対面の男の人とルームシェアリング始めました。
ミラノと東京の時差は8時間。日本のほうが8時間進んでいる。陽葵は、蓮とのことを報告したくてうずうずしながらテレビ電話代わりのタブレットを持って座っていた。

「何やってんの、陽葵?」

「ん~、もうすぐ午後4時だから、ミラノは朝の8時だなぁ、と思って」

「ああ、葵とテレビ電話か。今日は日曜だけど、葵は朝は強いほうじゃなかったっけ?」

「そうだね。かけてみようか」

呼び出し音が鳴って、回線がつながる。

「あ、陽葵~。ひさしぶりっ!元気だった?」

しゃきっとした葵が画面に現れてほっとした。

「うん、元気。蓮くんも・・・」

「ばっちり元気だよ」

陽葵の隣で蓮が微笑う。

「よかった。こっちも順調・・・と言いたいところなんだけど、イタリア語で苦戦してて。今は、英語でどうにかしてるけど、土日にイタリア語学学校に通ってるの。休む暇ないわ」

「たいへんそうだねぇ・・・でも、お姉ちゃん、語学は好きでしょ?」

「まぁね・・・あ、拓巳!こっち!!」

拓巳さんに最後に会ったのは、半年前だ。お姉ちゃんは、2年間、転勤願を出して、やっとかなったこととなる。

「こんにちは、陽葵ちゃん、蓮」

ここで言っていいものか、悪いものか、蓮と顔を見合わせた。言うなら、早いほうがいいよね。

「あのさぁ、葵、拓巳。僕、約束守れなかった。陽葵ちゃんと恋人になったんんだ」

「え~~~~~~~っ?」

大げさに驚く2人。そんなに驚くこと?

葵がため息をついて。

「まぁ、くっつっくことも想定してなかったわけじゃないけど・・・陽葵、惚れっぽいねぇ」

「いや、葵、違うんだ、僕が・・・」

「僕が?」

ベッドに押し倒して、とは言えないわなぁ、と陽葵は微笑ましく思った。

「僕から、好きになったんだ」

と言って、陽葵の肩を引き寄せる蓮。

「2人が幸せなら、言うことないわ。でも、まさかもう・・・」

蓮くんが真っ赤になって、必死に言った。

「してないよ、してない!!少なくとも1週間は、ルームシェアリングの彼氏彼女、ってことを約束したんだ」

「急ぎたくないしね」

陽葵が、蓮に向かって微笑んだ。

「あ~、なんか、あてられちゃったな。拓巳とのラブラブぶりをアピールするつもりだったのに」

ちょっと悔しそうな葵。

「じゃあ、あてつけようか」

と、画面の向こうで、熱いキスをする2人に、こっちのほうが恥ずかしくなったよ、と思った陽葵だった。
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