初対面の男の人とルームシェアリング始めました。
「ねぇ、ちょっと夕方のデートをしない?」

陽葵が蓮に提案した。

「あぁ、何処に行く?」

「10分くらい歩いたところに、ちょっと大きめの公園があるの。蓮くんと2人で行きたいな、と思って」

蓮が微笑んで

「いいな、行こうか」

「準備してくるね」

陽葵が言って、自分の部屋に行った。あの公園の高台から見る夕陽の景色は本当に綺麗だ。蓮に見せたい。

「行こっか」

2人で手をつないで歩くのも、なんだかまだ慣れてない。キス・・・したんだよね?なんだか夢のようだ、と陽葵は思った。しばらく歩くと、高柳公園(たかやなぎこうえん)に着いた。

「この階段をね、上っていくと、景色がすごくいいの」

「へぇ・・・じゃあ、行こうか」

展望台へ、と書いた道しるべを見て、蓮が言った。階段は結構きつく、2人とも軽く息が上がった。

「大丈夫、陽葵?」

「蓮くんこそ」

2人で笑いあった。

展望台に着くと、ちょうど太陽が沈みかけているところだった。眼下に見える住宅街が紅色に染まっていく。

「ホント、綺麗だな」

「でしょう?ここに、初日の出を拝みに来る人がたくさんいるのよ。今日は、日の入りだけどね」

「じゃあ、一緒に来ような」

陽葵は蓮の手をぎゅっと握ってつぶやいた。

「私たち、ずっと一緒にいられるよね?私、すぐに捨てられたりしないよね?」

それを聞いた蓮は、ふわりと陽葵を抱きしめて、それから優しくキスをした。愛おしむような、優しいキス。

「僕は、陽葵が好きだよ。・・・葵に似ているから好きになったって言う、奈美の言葉を気にしてるの?」

蓮は、熱く陽葵を見つめた。大好きだよ、の気持ちが伝わるといいのだけれど、と思いながら。

「私・・・私、こんな気持ちになるのは初めてかもしれない。複雑なの、蓮くんの気持ちを信じたいけど、お姉ちゃんの元カレを好きになっていいのかな、って。・・・もう、どうしようもなく好きになってるんだけど」

「僕は、陽葵を裏切らない。約束できるよ」

蓮は、がしっときつく陽葵を抱きしめた。この想いを伝えるにはどうすればいいのだろう、と考えながら。

「陽葵、約束のペアリングを買いに行こうか。・・・って、このへんでどこで売ってるかな?」

「新宿まで出ないとかも」

「じゃ、行こう。新宿で、何か夕食を食べような」

夕方のお散歩のつもりが遠出になっちゃったけど、まっ、いっか、と陽葵の心はあったかくなっていった。
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