初対面の男の人とルームシェアリング始めました。
満員電車に乗っている間、蓮はドア近くの手すりにつかまる陽葵を守るように、壁ドン状態で立っていてくれた。嬉しいけど・・・近いよ、ちょっと照れるよ、蓮くん。

代々木で陽葵が降りると、蓮は小さく手を振って見送ってくれた。なんかいいな、こういうのも。陽葵は思った。

キャンパスまでは、歩いて5分。8時半には教室に着いた。1番乗りかな、と思ったら、先客がいた。実だ。

「あれ、今日はやけに早いじゃん、陽葵」

「実こそ」

「俺は・・・真面目だからぁ、朝から予習してんの!」

おどけて言った実だが、実が真面目なのは、実感していた。以前は、そんなところに少し惹かれている自分がいたのだ。

「実務英語だよね、1限目は」

「そうそう。俺、吉沢教授を尊敬してんの。ハーバード大に留学してたんだろ。憧れるよなぁ」

「ホント、すごいよね。授業も、分かりやすいし」

「そうそう・・・そんなことより、今日は、なんでこんな早いんだ?いつも、10分前に雪乃と仲良く登校だろ」

「え・・・っと。」

「ん?はっきり言えよ」

「あのね、実、報告があって。蓮くん・・・同居人と付き合ってるんだ。で、彼の出社時刻に合わせて来たの」

「・・・」

「怒ってる?」

「怒ってないよ、俺は振られたんだ。陽葵が誰とつきあおうと、とやかく言う資格はない」

「・・・ありがと」

「礼なんて、言われる筋合いはないよ。陽葵の人生だ。自由に生きろ」

・・・あぁ、やっぱ、いいやつなんだよね。好きだなぁ。あ、蓮くんに対する想いとは全然別だけど、友達としての、「好き」。実には幸せになってもらいたい。
< 21 / 27 >

この作品をシェア

pagetop