死なないあたしの恋物語
それは夢というよりも、あたしの記憶を映像としてそのまま見ているようなものだった。


夏休みに一緒にアイスを食べたこと。


宿題が終わらなくて放課後一緒に勉強をしたこと。


文化祭ではなぜか毒キノコについて発表、展示することになったこと。


そのどれもがあたしにとってとても大切な記憶だった。


洋介君といると楽しかった。


ずっと一緒にいられるんじゃないかと、勘違いするときもあった。


ほら、愛のパワーとかそういうので、あたしの時間も再び動き出すんじゃないかなーなんて。


でも、現実は違った。


どれだけ人を好きになってもあたしは不老不死のまま。


この体はなにも変わることがなく3月にさしかかろうとしていた。


学年が上がる前に、あたしは洋介君を校舎裏に呼び出した。


それはまだ寒い日の夕方頃のことだった。


『あのね、びっくりせずに聞いてほしいんだけどね』


あたしは地面を見つめて言った。


当時はまだ学校に焼却炉があり、学校内で出たゴミはそこで燃やしてもいいことになっていた。


そこから、灰の臭いが漂ってきていた。
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