王宮女官リリィ外伝〜あの子はだあれ?
クロロルはそれだけじゃない。
時間が経つと傍らにあるかぼちゃを勝手に放り込み、口でくわえた木匙で鍋をかき混ぜる。
それからどこからか持ってきたミルクをくわえ、いくつかのハーブとクママルが持っていた稲科の植物であるキテンも放り込む。
やがて、グツグツとミルクのいい匂いが漂ってきた。
クロロルが鍋をかき混ぜるたびに、かぼちゃとミルクの甘い豊かな香りが広がる。
「ごめんなさい……ま、まあ!」
キュリオの母親が入ってくるなり驚いた。
「猫ちゃんがお料理なさるなんて! それよりは……」
かき混ぜるなかみを見た母親は得心が言ったように頷いた。
「これ、パンプキンライスですわね。お祭りで作るこの土地の伝統料理なんです。
ありがたく思いますわ……
今年はわたしが作ると町の方に言ったのにレシピを忘れてしまい、代わりにパイを焼いたのですけど。
これで町の方々にキュリオをからかわせずに済みます」
母親はクロロルにペコペコと頭を下げるが、クママルはクロロルが何か言いたげなのに気付いた。
前足で何かのマークを書いてはちょんとつつき、キュリオの母親をやたらと指した。