王宮女官リリィ外伝〜あの子はだあれ?


クロロルはそれだけじゃない。


時間が経つと傍らにあるかぼちゃを勝手に放り込み、口でくわえた木匙で鍋をかき混ぜる。


それからどこからか持ってきたミルクをくわえ、いくつかのハーブとクママルが持っていた稲科の植物であるキテンも放り込む。


やがて、グツグツとミルクのいい匂いが漂ってきた。


クロロルが鍋をかき混ぜるたびに、かぼちゃとミルクの甘い豊かな香りが広がる。


「ごめんなさい……ま、まあ!」


キュリオの母親が入ってくるなり驚いた。


「猫ちゃんがお料理なさるなんて! それよりは……」


かき混ぜるなかみを見た母親は得心が言ったように頷いた。


「これ、パンプキンライスですわね。お祭りで作るこの土地の伝統料理なんです。
ありがたく思いますわ……
今年はわたしが作ると町の方に言ったのにレシピを忘れてしまい、代わりにパイを焼いたのですけど。
これで町の方々にキュリオをからかわせずに済みます」


母親はクロロルにペコペコと頭を下げるが、クママルはクロロルが何か言いたげなのに気付いた。


前足で何かのマークを書いてはちょんとつつき、キュリオの母親をやたらと指した。

< 20 / 34 >

この作品をシェア

pagetop