王宮女官リリィ外伝〜あの子はだあれ?
キュリオは華やかなかぼちゃ祭りのなか、顔を見られないように布で隠しながら歩き回った。
かぼちゃ祭りは愛の祭りという。母親はそう言って毎年キュリオにパンプキンパイを作ってくれた。
しかし、今のキュリオに愛などわからない。
まだ8歳のキュリオだが、世の中の冷たさは十分身にしみていた。
キュリオは父親など知らない。
物心ついた時から母親と2人きりで、この町で生まれ育った。
めったに雨が降らず乾燥した、沙漠地帯に近い不毛な土地。
特徴的な産業や観光になるものは何一つなく、みんなが貧しさに喘いでいる。
町の一部のものが治水権利を独占しているため、一般人は真水を高価な値段で買わねばならない。
それゆえに農業でも水をたくさん使える作物が栽培出来ずに悪循環に陥ってた。
もっとも幼いキュリオにそんな事情がわかるはずもなく、ただ自分の置かれた状況を恨むしかできない。
周りから片親とからかわれるのがいやだったし、母親をバカにされたからキュリオは嘘をついた。
“父ちゃんはいるよ! 金持ちでいつか迎えに来てくれるんだ”と。
もちろんそんな大それたウソをついたキュリオ自身良心が痛み、その日は母親の顔をまともに見られなかった。