婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
「うん。女神の名前はクロエのほうがふさわしいわ」

 だって、彼女は白い声などなくてもみんなを元気にできる。オディーリアからすれば、それは魔法のように思えるのだ。

(そうか。レナートの言いたいこともコレだったのかも……)

 オディーリアは彼の気持ちを初めて理解したような気がした。聖女の力がなくてもできることはある。いつもレナートやクロエがオディーリアに力をくれるように。

 褒められたのに、クロエはなぜか不満気に唇をとがらせている。

「そんな~後宮で女の争いがなくて退屈しているオデちゃんに女の争いを提供してあげようと思ったのにー。ね、私と女神の座を巡ってバチバチと戦おうよぉ」
「そんな展開、誰も求めてないと思う……」

 クロエはいつでもどこでも相変わらずだ。

「やだ~。オデちゃんが大人の女になっちゃってる~。つまんなーい!」

 くだらない話を延々と続けるクロエを無視して、オディーリアは兵士たちの看護に戻った。

(白い声は取り戻したい。でも今は、自分にできること、兵の看護をしっかりしよう。それがきっとレナートのためにもなる)

 イリムには会いたいが焦りは禁物だ。余計なことはせずにじっとチャンスを待ってみよう。オディーリアはそう決意した。
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