婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
 もたらされた吉報にイリムは薄く微笑んだ。

「そうか。やはり生きていたか」

 側近は頭を垂れたまま、イリムに報告する。

「はっ。ナルエフ軍で戦場の女神と評判になっている女がいるようなのですが、その者がオディーリア様かと思われます」
「女神?」

 イリムは自身の顎を撫でながら、はてと首を傾げた。

「あいつの声は奪ったはずだろう?」

 側近も困惑気味の表情で話を続ける。

「えぇ。そのはずなんですが……」
「まさか、白い声を失っていなかったのか」

 イリムは眉をつりあげた。失った自分が大打撃をうけているあの力を、敵国に渡してしまったとなれば大問題だ。

「いえ、それはありません。そうではないんです。なんでも、魔力ではなくあの笑顔に癒されるなどとナルエフの兵は申しておりまして」
「笑顔?」

 イリムの知るオディーリアには最も無縁な単語だった。いつも無表情で、笑いもしなければ、怒りも悲しみもしない。オディーリアは感情のない人形のような女だった。
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