婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
「えぇ? 集団食中毒かと本気で心配したのにあれはレナートの仕業だったの?」

 事件は昨日に起きた。十名ほどのナルエフ兵が腹痛を訴えひどく苦しみだしたのだ。食事に問題があったのかとオディーリアやクロエは相当心配していたのだが……。

「自身の兵士に下剤を飲ますなんて、一体どうして」

 唇をとがらせて、珍しく怒りをあらわにしているオディーリアにレナートはけろりと言葉を返す。

「あいつらはロンバル兵だ。我が国の兵じゃない」

 オディーリアは言葉を失った。彼らがスパイだったから、レナートは薬をもってその動きを封じたということなのだろうか。

「でも、そんなこと可能なの? あれだけの人数のスパイがまぎれこむなんて」

 レナートは複雑そうな表情でうなずいた。

「ありえない話じゃない。ナルエフ側に手引きをした者がいればな……」
「こちらにも裏切り者がいるの? それって、もしかして……」

 オディーリアの頭に浮かんだ人物はひとりだけだ。あのパーティーの夜、レナートにはっきりとした敵意を向けていた彼。

「クリストフ殿下?」
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