婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
「俺がどうしてあいつらをスパイだと見抜けたか、わかるか」
 
 オディーリアは素直に首を横に振った。

「剣の構え方だ。国や地方によって、微妙に違うんだ。辺境地の兵ならともかく俺の軍に編成される人間はそれなりのエリートたちだ。ロンバル式の構えをしているのは不自然だ」
「なるほど。あっ、だからイリムは面白いと言ったのね?」

 少し前にレナートが言ったセリフの真意にオディーリアは気がついた。レナートはにりと笑う。

「そう。あいつは総大将のくせに、戦場もそこで戦う兵のことも見ていない。自身の兵がどう剣を振るうかも知らないのだろう」

 イリムをかばう言葉は思いつかなかった。まさにレナートの言う通りなのだろう。イリムは兵になど興味はない。自分の持ち駒だとしか思っていないはずだ。

「クリストフはそこまで馬鹿じゃない。今回のスパイを手引きしたのがクリストフならナルエフ式の構えをきちんと教えたはずだ。イリムと同じくらい戦場を知らない人間……バハル兄上だ」
「そんな!」

 穏やかで優しそうな人物に見えたのに。オディーリアにはとても信じられなかった。

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