婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
「俺も信じたくはないが、バハル兄上は幼い頃から身体が弱く戦はもちろん剣の稽古すらしたことはない。構え方の違いは知らないはずだ」

 イリムとバハル。このふたりが組んでいたからこそ、レナートはスパイを見抜くことができたのだと言う。

「クリストフにそそのかされたのか、バハル兄上自身の意思かはわからないがな」

 レナートは裏にクリストフがいることは確信しているようだった。

「でも、スパイの存在に気がつけてよかった」

 そのままにしていたら、今頃レナートはどうなっていただろうか。考えるだけで指先が震える。もう彼なしに生きていくことなど、オディーリアには考えられなかった。レナートは厳しい顔つきのまま、遠くを見つめた。

「そうだな。もし気がつかずにいたら…俺はイリムに殺されていただろうな。それに」
「それに?」

 レナートはじっとオディーリアを見据えた。

「クリストフは二重に罠を仕掛けた。イリムが俺を始末してくれれば万々歳。もし失敗しても、スパイを手引きした罪をおそらくオディーリアになすりつけるつもりだったんだろう」
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