婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
 思いがけず自分の名前が出たことにオディーリア驚き、目を見開いた。

「私に?」
「あぁ。お前も、自分がまっさきに疑われると思っただろ?」
「……うん」

 そうだ。レナートやマイトは信じてくれるかもしれないが、他の人間に信じてほしいと言うにはやや無理がある。オディーリアがロンバル人で、イリムの婚約者であったことは紛れもない真実なのだから。

 オディーリアは初めて自分がロンバル人であることを恨めしく思った。

(ナルエフの生まれだったら、レナートに余計な負担をかけなくて済んだのに)

 何度も自問自答した問いが、またオディーリアの思考を占拠する。

『レナートのそばにいるべき女性は本当にお前なのか。もっとふさわしい女性がいるのではないか』

 いつも結論は出なかった。自信をもって「そうだ」とも言えないし、かといって彼のために身をひく強さも持てない。

(白い声を取り戻せれば、少しは自信が持てるかと思ったんだけどな)

 グズグズと弱気な自分が心底嫌になる。オディーリアは小さく息を吐いた。

「またネガティブになってるだろ」

 コツンとおでこに軽い衝撃が落ちてきた。視線をあげれば、レナートが少し怒ったような顔で額をくっつけていた。
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