婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
「なにか?」

 オディーリアが聞くと、レナートは馬を降り自身の上着を彼女の肩にばさりとかけた。

「国境をこえたらもっと冷え込む。着ておけ」
「……どうも」

 オディーリアは素直に好意に甘えることにした。温暖なロンバルで育った彼女は寒さには慣れていなかった。 
 明確に異なるもの、それは気温だ。ナルエフ領に近づくにつれ、気温がぐんぐん下がっていくのをオディーリアは文字通りに肌で感じていた。
 たしかにロンバルより北に位置するとはいえ、地理的にそう大きく離れているというわけでもないのだが……。

「ナルエフに吹く風が冷たいのは海流の影響だ。土地は痩せているし、晴れの日が少ないからか作物も育ちにくい」
「それは困りますね」

 暖かな陽光と優しく降り注ぐ雨は、天から与えられる最上のギフトだ。実際、温暖な気候と肥沃な大地のおかげでロンバルは長い歴史を築いてこれたのだ。

「まぁ、曇りが多いのも悪いことばかりじゃないぞ」

 オディーリアは首を傾げた。曇りのメリットがあまり思い浮かばなかったからだ。

(なんだろう……暑くなり過ぎないとか? でも寒い国でそれって、いいことなのかしら)
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