婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
 国境をこえナルエフ領内に入り、しばらくすると大きな街に着いた。レナートはその街で一度軍勢を止めた。そこで軍を二手に……といっても、大多数を先に行かせてしまいレナートと彼の率いる隊のうちの数名だけを街に残した。

「ここがアーリエですか?」

 首都に到着するのは明日の予定と聞いていたが、行軍がずいぶんと早まったのだろうか。

「いや、アーリエはもう少し北、ここはリムという街だ。俺たちは今夜はここで宿を取ることにする」
「なにかあったのですか?」

 アーリエまで一気に戻るという話だったはずだ。レナートは大きくうなずいた。

「ある。オディーリア、お前具合が悪いだろう」
「へ?」
「騎馬のスピードが急に落ちた」
「それは、一日中駆けさせていれば馬も疲れるでしょうし……」
「俺の軍の馬はそんなにひ弱じゃない。疲れてるのはお前だ」

 言いながら、レナートは額を寄せた。

「ほら、やっぱり熱い」
「そんなこと……」

 そう言われてみれば身体が熱いような気もするが、額ごしにレナートから伝わってきた熱のせいのようにも思える。
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