婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
 勝算はどの程度あるのだろうか。ナルエフは破竹の勢いのある国だが、伝統国には歴戦をくぐり抜けてきた経験がある。レナートはあっけらかんと答える。

「わからん」
「そんないい加減な……」
「あちらがどの程度本気で来るのかまだ読めないし、そもそも戦争に絶対はない。圧勝する戦でも、死ぬときは死ぬ」

(死ぬ……この人が?)

 オディーリアは自分がひどく動揺していることに気がついた。指先がかたかたと震える。オディーリアの震える手を、レナートは力強く握り締めた。

「ま、そう心配するな。俺はそんなに弱くはないし悪運の強さには自信がある」

 そう言ってレナートは笑うが、オディーリアは笑えなかった。

(イリムが戦に出るときはこんな気持ちにはならなかった。こんな感情は知らない)

 オディーリアは無意識のうちにレナートの手をぎゅっと握り返していた。

「どうした? めずらしく情熱的だな」
「わ、私も連れて行ってください! 治癒能力はないですが、戦場は慣れています。負傷した兵の手当などもひと通りできますから」
「なんだよ。そんなに俺と離れがたいか?」

 レナートは冗談めかして言いながら、繋いだ手とは逆の手で彼女の頬をさらりと撫でた。
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