婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
 もちろんレナートに勝利して欲しいと思ってはいるが、カシュガル兵に恨みがあるわけではない。どちらの軍の犠牲者も、少ないほうがいい。
 雪は……きっと犠牲者を増やすだろう。そうなっても、〈白い声〉を持たない自分は、彼らの命の火が消えていくのをなにもできずに見ているしかないのだ。

「そうだね。そろそろ帰りたいな」
「……ごめんね」
「オデちゃんを責めてるんじゃないよ! そろそろ、ケーキとかクッキーが恋しいなぁってだけで」

 夕刻から降り出した冷たい雨は、夜更けには雪へと変わった。

「とうとう降り出したな」
「重症の兵達が心配です」

 寒さは、なけなしの体力を無情に奪っていくだろう。明日の朝、冷たくなっている者はいないだろうか。
 オディーリアの瞳が不安げに揺れる。レナートはそんな彼女を励ますように、言った。
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