婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
 アスランはいったん本陣に退き、怪我の治療に専念することにした。
 が、治療にあたってくれた女が……大ハズレだった。

「えーっと、まず消毒よね。あ、これね、これ」

 女は小瓶の蓋をあけ、手にしている綿布に中の液体をドボドボと垂らした。量が多すぎるし、なにより……

「それは消毒液じゃないです。そっちの緑の蓋の方です」
「えっ、マジ? あ、ほんとだ。書いてあるわ」
「……初めて見る顔ですね」

 長期に渡る戦の場合、女の従軍はさほど珍しいわけではない。いわゆる夜の女達だ。あとは炊事や看護にも何人かの女が混じることはあるが……彼女のようなタイプは普通いない。
 身なりや立ち居振る舞いから推測するに、彼女は貴族の娘だろう。なぜ、こんなところに紛れ込んだのだろうか。

「そう、初めてなのよ。だから、包帯うまく巻けないかもしれないけど許してね!」

 初めてとか、うまくないとか、そういう次元ではなかった。
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