婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
 包帯を切るはずのところで肉を切られ、余分な傷がひとつ増えた。二日で完治させるつもりのアスランには、これは深刻な問題だ。

「もう自分でやるから、それ貸してください」
「え~でも怪我してるのに」
「怪我は脚です。手は無事ですから」

 たとえ手を怪我していても、彼女よりはうまく巻けるだろう。そう思ったアスランは彼女から包帯を奪い取った。

「わっ、上手ねー」

 くるくると器用に包帯を巻いていくアスランを眺めながら、彼女はぱちぱちと手を叩いている。

『戦場になにしに来てるんだ?』

 そう文句のひとつも言いたかったが、明らかに自分より身分の高そうな女だ。アスランは心の声をぐっとのみこむ。こんなつまらぬ事で斬首にでもされたら、たまらない。
 自分が死ぬときは隊長の盾としてだ。彼はそう心に決めていた。
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