婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
 強く心を惹かれたのは、そのアンバランスな内面だった。彼女のなかには、強さと脆さが同居している。

 婚約者に売られようが戦場に放り込まれようが、少しも揺らがない強い女かと思えば、治癒能力とやら以外にはなんの価値もないと信じこむ自信のない女でもある。

 その強さを眩しく感じるし、弱さは守ってやりたいと思う。

 この感情は、恋心ってやつなのだろうか。

「まずいな……」

 レナートは思わずつぶやいた。彼が結婚しないのには実は理由があった。
 執着を恐れているからだ。特別ななにかは、そのまま自身の弱みともなる。

 これまで、レナートは戦に恐れを抱いたことはなかった。明確に戦力差のあるときでも、だ。自身の腕にそれなりの自信があることも理由のひとつだが、一番は死を恐れていないからだろう。

 戦い、その結果、死んだとしても構わないと思っていた。将軍だろうと一介の兵士であろうと、軍人の人生とはそういうものだと考えていたからだ。
< 84 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop