婚約者に売られたドン底聖女ですが敵国王子のお飾り側妃はじめました
「まぁでもわずかに急所は外してる。強運だったよね」

 その言葉にオディーリアはようやく息をついた。油断は禁物だが、助かる可能性のほうが高いというところなのだろう。

「……運じゃないぞ。当たる寸前にほんの少し身体を反らした」

 苦しそうな声でレナートが言った。

「ドヤるぐらいなら、完璧にかわしてくださいね。最後の最後で、なに油断してるんですか」
「いつになく厳しいな、マイトは」
「だって……レナート様の身体の傷
は、ほぼすべて僕がつけたものでしょう。一番深い傷が流れ矢ごときだなんて……これ以上ない屈辱です」
「そうか。それは……すまないな」

 レナートの身体に数多ある傷は戦の最中ではなく、マイトとの稽古中についたものであるらしかった。
 マイトは憎まれ口をたたいているが、その本心には主を守れなかった悔しさがあることにオディーリアは気がついていた。

「なんかさ、やっぱあのふたりあやしくない? 流れてる空気、ピンク色じゃない?」

 オディーリアは美しい主従関係と見ていたが、クロエのフィルターを通すとまったく違うものになるらしかった。
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