【受賞&書籍化】高嶺の花扱いされる悪役令嬢ですが、本音はめちゃくちゃ恋したい
「いらっしゃいませ。お久しぶりですね、レイ様。仮面はご入り用で?」
「くれ。二人分」

 男は、目元を隠す仮面を差し出した。黒い方が男性用、白い方が女性用で、女性用は手に持つステッキが付けられている。
 レイノルドは黒い面を付けると、マリアの手に白を持たせた。

 この時点で、マリアの嫌な予感は最高潮だった。

「これは何ですの」
「決して外すな。顔を見られると、色々とまずいだろ」
「まずい場所にわざわざ連れて来るなんて、どういう了見ですの?」
「俺の本気が見たいって言っただろ」
「言いました、けども! こんなの想定外ですわ!!」

 マリアは、ようやく相手が『悪辣王子』だと思い出した。町の悪党と通じていて、露見しないだけで犯罪にも手を出しているとか、貴族令息を脅しているとか……。

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