7歳の侯爵夫人
「さぁおいで、コニー…」
フィリップが手を出して触れようとすると、コンスタンスは顔を隠してオレリアンにしがみついてしまった。
オレリアンはそんな妻を振り返り、宥めるように優しく頭を撫でた。
そう、今のコンスタンスが慕っているのは、王太子ではなく夫であるオレリアンなのだから。

「殿下…、コニーは私の妻です。それ以上近づくのはおやめください」
オレリアンは妻を抱き抱えるようにしながらフィリップを睨みつけた。
「このような状態の妻を王宮に連れ帰り、どうするおつもりですか?王妃様の侍女など、つとまるわけがありません。それに、妻は10年に及ぶお妃教育も覚えていないのです。殿下のお役に立つことは、何一つございません」
「役に立つなど…。…妃の仕事は正妃がするだろう。コニーはただ私の側妃として、愛でられ、慈しまれる存在になってくれればいいのだ」
「愚かなことを…!コニーは7歳の少女なのです!側妃だなどと、玩具にでもなさる気か⁈コニーは私の妻だ!貴方の玩具にはさせない!」

「貴様!不敬だぞ!」
護衛騎士が再び剣の柄に手をかけ、フィリップの前に立った。
「王命だと夫人を取り上げることも、不敬だと貴様を斬り捨てることも出来るのだ!」
宰相の嫡男もそう叫んでいる。

激怒する2人に凄まれても、オレリアンはさらに燃えるような瞳でフィリップを睨みつけた。
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