7歳の侯爵夫人

2

「あの方、またいらしたの?」
コンスタンスは窓辺に置かれている一輪挿しを見て、そう呟いた。
ヒース侯爵オレリアンが、毎日仕事の帰りにルーデル公爵家に立ち寄り、コンスタンスに花を贈るのだ。

贈ると言っても直接渡すわけではなく、侍女や門番に手渡すだけ。
最初の数日は花束だったが、さすがに毎日花束では置き場所に困ると思ったのだろう、今は毎日一輪だけになった。

それでも、花は1日で枯れたりしないし、毎日違う花だから同じ花瓶に挿すとおかしな色合いになってしまう。
侍女のリアは新しい花のみを主人の部屋に飾り、前日までの花は別の部屋に移動したり侍女たちに下げ渡したりしていた。

今日は黄色の水仙だ。
黄色の水仙の花言葉は『私のもとへ帰ってきて』。
あの不器用そうな男が花言葉なんて考えているかは知らないが、リアは花を置いていく時の彼の切実な目を思い出して切なくなった。
< 209 / 342 >

この作品をシェア

pagetop