もふもふな聖獣に反対されても、王子は諦めてくれません
番の契りを解いてもらった今、動物たちと触れ合い放題になった場合の変貌ぶりを先輩にはどうやって説明しようか、と悩んでいたのに。
「それにしてもマリーの奇跡の真相が、オレガの実だったとはな」
城で検証した結果は王都の人々にも知らされ、浸透していっている。
オレガの実を食べると、消費した魔力の回復が早くなる。
本人の元々持っている以上に魔力が備わるわけではないが、枯渇を起こす者が少なくなり大変ありがたがられている。
マリーが城に呼ばれたのは、"マリア様の奇跡"の実態を調べるためであり、謎が解けたために無罪放免となったと説明してある。
エリックの聖獣の秘密を知ったからだとか、王子の番であったからだとか、とても話せる内容ではない。
そこまで考えて、ふと思い出す。
カーティスは元気になったのかな。
ユラニス王国第三王子の聖獣がお披露目された、という話は聞かない。また、冷血王子が穏やかに変わった、という噂も耳に入らない。
真っ白な聖獣に揉みくちゃにされつつも、もふもふし放題だったほんの数日が夢のようだ。冷酷だと信じて疑わなかったエリックにからかわれながらも、毎日が充実していて楽しくて。
「マリー。治療魔法お願い」
「あ、はいっ!」
今だって動物に避けられつつも、頼りにされている。頑張らなくちゃと、気持ちを切り替えて笑顔を携えた。