もふもふな聖獣に反対されても、王子は諦めてくれません

 王都中央動物病院の仕事は多岐に渡り、依頼を受けて往診する場合もあった。

「王都の外れで大型動物が怪我をしたそうで、その治療依頼が来ているわ。マリー行ってくれるかしら」

 野戦病院での功績が認められた点と、大型動物を恐れないため、病院にもたまに診療に来る大型なタイプはマリーが担当していた。

 人間よりも大きな動物の場合、歩けないほどの状態の動物は病院に連れて行くのもままならない。

 そのため必然的に、大型の動物の往診が多くなる。

「はい。すぐに向かいます」

 一旦準備に帰り馬車で行くため、荷物を取りに歩き出す。

「マリー。俺も一緒に行くんだ。よろしく」

「そうなんですね。心強いです」

 野戦病院で働いていたというのもあり、先輩とペアを組む機会も多い。戦獣を治療した経験のある治療士同士でいけるのは、とてもありがたかった。

「今回は少し遠い。向こうで泊まってきてもいいかもしれない」

 泊まりかあ。

 日帰りで帰れない距離でもない。ただ、それは移動魔法を使う馬車に乗った場合だ。

 内臓が置いていかれる気持ち悪さを思い出し、身震いをする。

「移動魔法、苦手なんですよね」

「だったら、一緒に宿を取るよ」

 ぱあっと晴れやかに顔を明るくさせる先輩に、そんなに旅行気分が味わいたかったのかなあと微笑ましくなる。

「ありがとうございます」
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