もふもふな聖獣に反対されても、王子は諦めてくれません

 待ち合わせ場所から頼んでいた馬車に乗り込み、目的地を目指す。馬車に揺られながらの話題は、移動魔法について。

「移動魔法って、どうしてあんなに気持ち悪いんでしょうね」

「うーん。俺は未だに経験がないからなあ」

 移動魔法がよほど珍しいらしく、馬車を操縦する御者(ぎょしゃ)の男性も話に加わった。

「お嬢さん。移動魔法とは随分高級な馬車に乗りましたねえ。どこの馬車ですかい?」

「それは……」

 言われてみればそうだ。マリー自身も王子の馬車に乗ったのが、生まれて初めてだった。

「マリーは、王族御用達の馬車に乗ったからさ」

「せ、先輩!」

「へえ。そいつはすごいや」

 先輩は得意げに「マリーの魔力を買われてね」と話す。

 もう。口が軽いというか、すぐに話しちゃうんだから。

 先輩には絶対に城での出来事を話さないと、改めて心に誓う。

 そういえば、エリック様と聖獣の秘密や王子の本当の姿をうっかり話したら、社会的に抹消されちゃうんだっけ。

 イーサンの恐ろしい脅し文句や、冷たい眼差しさえもどこか懐かしく感じながら、のどかに進む馬車旅を楽しんだ。
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