もふもふな聖獣に反対されても、王子は諦めてくれません

「驚かしてすみませんでした。あなたは治療士のマリーさんですか?」

 前にいる先輩を飛び越え、マリーの名前を確認しようする男性を胡散臭く思った。それに待ち伏せをしていた感が否めない。

「いえ。違いま……」

「そうですよ。よくご存じですね。野戦病院のマリアとは、マリーのことさ」

 もう‼︎ それ、言わなくていい紹介!

「そうですか。それはそれは。幸運にもビンゴだ」

 ビンゴ? 近頃、ビンゴにいい思い出はないのに。

 ますます嫌な予感がして、後退る。

「おっと。動かない方がいい。こいつは腹を空かせてるんだ」

 鬱蒼(うっそう)とした木の陰から現れたのは、大きなヒグマ。他にも数名、大型の動物と共に姿を現した。どの動物も岩のように大きく、目が血走っている。

「あなたたちは? とても治療を依頼した人には思えないわ」

 口の端に卑しい笑みを浮かべ、顔を見合わせている。

「いやあ。治療をお願いしたいね。王国の腐った王政をね」

 王政って、王国の政治って意味?

 眉を(ひそ)め、「私たちには動物の治療しかできないわ」と素直に返す。
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