もふもふな聖獣に反対されても、王子は諦めてくれません
ただ、そこまでの強大な魔力の備わっている者は騎士や王族ばかりのため、襲おうとしてもヒグマの方が返り討ちに遭うので、被害は報告されない。
記念すべき、初の報告事例ね!
両手を胸の前で組み、せめてひと飲みで痛くありませんようにと、祈りを捧げた。
次の瞬間、視界の全てを真っ白に覆うような大きな翼が音もなく優雅に舞い、マリーは翼の主に連れ去られた。
「キャッ」
小さな悲鳴を上げ、目をギュッとつぶる。
「お、おいっ! 待てっ!」
呆気に取られた男たちも、慌てて声を上げる。
いつの間にか、白、というよりも白銀の大きな動物の背に乗ったマリーは、自分の体に回されている腕が漆黒の軍服だと気付く。
闇夜に紛れるその色は、あの麗しの王子が着ているものだ。
「意味のない争いを続けたいという愚か者は、頭を冷やした方がいい」
よく通る低い声を聞き、なぜだか涙が溢れそうになる。
しかし、王子が男たちに手をかざし、なにか呪文を唱えようとしていると気づき慌てて止めに入る。
「ま、待って。先輩が」
王子の凄まじい魔力の大きさを感じ、体は勝手に震え出す。
「助ける必要があるのか?」
「み、見捨てちゃうんですか?」
氷のような眼差しを向けるエリックに、背筋が凍る思いがした。