もふもふな聖獣に反対されても、王子は諦めてくれません

 必死な訴えをするマリーから、エリックは顔を背けてしまった。そして小さな声でぼそりとつぶやくように言った。

「わかっている。それではあいつらと大差がなくなる」

 表情を見られなくないのか、顔は背けたまま。大きな背中をこちらに向ける王子は、いい行いをするのが恥ずかしい小さな子どもみたいだ。

 エリック様はやはり心優しい王子なのかな。

 再び考えを改めているとエリックの腕が伸びてきて、軽々と抱き上げられる。

「あ、あの。どうされました?」

「城へ帰る」

 エリックはマリーを抱えたままカーティスの近くまで歩んでいくと、カーティスが挨拶をするみたいに尻尾でフサッと顔を撫でた。

 うわっ。極上のもふもふ! いやいや、なに懐柔されかけてるの!

「あ、あの。私、城に帰るわけには……。まだ仕事がありますし」

 往診依頼は偽りの依頼だったのか、実際に患者はいないのか。その辺りを明確にしてからでないと、帰るに帰れない。

 それにマリーには、城に帰る場所などなかった。
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