もふもふな聖獣に反対されても、王子は諦めてくれません

 数日寝込んだマリーは魔力を使い果たした枯渇というよりも、空の旅の刺激が強過ぎた知恵熱のようなものだった。

 寝ながら食べる芸当を繰り広げながら療養しているうちに、再び聖獣の世話係としてのポジションを獲得したらしかった。

 今日は見舞いがてら、食堂に連れ出してくれたケイトと一緒に食事を楽しんでいる。

「良かったわ。マリーが戻って来られて」

 ほくほく顔のケイトは声を(ひそ)め、付け加えて言う。

「なんでもマリーが孤児院育ちだから、って理由をつけて誰かが追い出したって噂」

 ケイトは怒っているが、マリーはどことなく納得してしまう。孤児院育ちのただの小娘が王子の権力を笠に着て、城で働いているのは面白くないのが普通だ。

 しかし次のケイトの言葉に、マリーは驚く。

「追い出したのは、第三王子のエリック様じゃないかって密かに吹聴されていたのよ」

「えっ。エリック様は……」

「そうよね。あんなに熱い空の散歩を見せつけられたら」

 空の散歩なんて、悠長なものではない。熱く見えたのは、恐怖に慄くマリーがエリックにしがみついたせいだし、抱きかかえられたのは脱力したマリーが歩けなかっただけだ。

 そもそも呼び寄せたエリックが追い出す真似……。いや、現実は遠からずではある。用無しになったマリーには、文字通り用が無いはずで。
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