もふもふな聖獣に反対されても、王子は諦めてくれません
頭を左右に振ってため息をついていたイーサンが、唐突に真面目な声で言う。
「マリー様。まだ壺の弁償代は、相当な額が残っております」
「……はい?」
素っ頓狂な声が出て、イーサンは眉を上げる。
「よもや、踏み倒そうとお考えですか?」
「いっ、いえ」
踏み倒そうというか、うやむやになったとばかり思っていました!
マリーがたじろいでいると、扉が開き王子が現れる。イーサンを視界に映すとあからさまに"しまった"という顔をした。イーサンに苦手意識があるのは、エリックも同じだったようだ。
「殿下、ちょうどお話しがしたいと思っておりました」
「ああ。手短に頼む」
気怠そうに応えるエリックに、イーサンは表情こそ変えないものの凄まじい速さで話し出した。かなりご立腹らしい。
「いいですか? 口布も付けず、近衛もつけず、勝手に城を出て行かれては困ります」
小言の応酬に、エリックは口の端を上げる。
「伝言したはずだが? だいたい総指揮官である俺が護衛されるなど、笑い草だ」
いつものことなのだろう。イーサンも引かずに言い返す。