もふもふな聖獣に反対されても、王子は諦めてくれません

「嫁に、なるだろう?」

 一瞬驚きつつも、王族の戯れ言だと気付く。からかいの言葉を真に受けている場合ではない。自分の身の置き場を考えなければと思い、提言する。

「私は孤児院の出身です。本来、城にいるべきではありません。古い言い伝えである契りも解消された今、再び街の治療士としての仕事に就くべきだと」

「前にも言ったはずだ。孤児院出身がなんの意味を持つ」

 距離を詰められ、言葉に窮する。

 どうして王子は、孤児院の話をし始めると迫ってくるの⁉︎

「で、でもっ」

「伯爵令嬢や公爵令嬢にマリーを仕立て上げれば、その口を黙らせられるのか?」

 公爵令嬢というフレーズに引っかかりを覚えて、ハッとする。

 ケイトの申し出を受け入れたら、エリック様の思う壺じゃない‼︎

 なんてタイミングなの⁉︎

"仕立て上げれば"だなんて、もしかしてケイトの提案も王子が裏で一枚噛んでいるんじゃって疑っちゃうわ。

「どうした?」

「いえ。なにも」

 下がっていく視線を上げさせるように、顎に手を当てられ強引に顔を上向きにさせられる。

 青く澄んだ海色をした瞳に見つめられ、心臓が誤作動を起こしそうだ。

 目を逸らしたいのに、催眠術にでもかかったみたいに微動だに出来ず見つめ合う。

 顔が近付いてきて、王子の長いまつ毛が瞬く様まで鮮明に目に焼き付いて……。
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