もふもふな聖獣に反対されても、王子は諦めてくれません

 不意にノックの音がして、驚きで肩が跳ねる。

「えー、重要な報告を忘れておりました」

 なんの遠慮か、扉は開かれないまま声がする。声はイーサンのものだ。

「ああ、話した方が良さそうだ」

 顎から手は離され解放されると、マリーは脱力してよろよろと近くの椅子にもたれかかる。

 な、なんだったの?
 今の空気は。

 ドキドキと騒がしい胸を抱き、平常心を取り戻そうと努める。

 そんな中、イーサンはエリックの許しを得て、再び顔を出した。

 エリックへの報告かと思いきや、イーサンはマリーに向かって話し始める。

「マリー様には、ある疑惑が持ち上がっております」

「ぎ、疑惑ですか?」

 今度は違った胸騒ぎを覚え、椅子の背に置いていた手に力が入る。

 清く正しく生きてきた。疑いをかけられる(いわ)れはない。それでもどこか、判決を聞く心持ちになり、ドギマギする。

「マリーはなぜ孤児院で育ったのか」

 エリックに低い声でそう告げられ、胸が痛くなる。マリーだって知りたかった。両親はなぜ、自分を育てなかったのか。

 育てられない事情があったのか、自ら育てない選択をしたのか。

 けれど、それを知る術はなかった。
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