もふもふな聖獣に反対されても、王子は諦めてくれません
そこからわらわらと人数が増え、森に溶け込む濃いモスグリーンの軍服の男性が数十名。人数が多いせいもあり、圧倒されテント内は騒然とする。
その先頭を歩くのは、闇夜に紛れそうな黒の軍服を着た長身の男性。コートを肩に掛け、歩くたびにマントのように裾が翻る。
その人は口元を布で覆っているため、どんな顔かは見られない。
位の高い人物は身分を明かさないために、公式以外の公の場では顔を隠しておくのが正式な装いになっている。
けれど、あれだけオーラを放っていたら、隠すだけ無駄というものだ。
「エリック様だ」
誰かの囁き声が聞こえ、目を丸くする。
エリック様って、今回の戦を平和的解決に導いたとされるユラニス王国第三王子のエリック様⁉︎
驚きのあまり凝視すると、離れた場所に位置する王子と視線が絡んだ気がして、体を固くする。
「マリー! 跪くんだ」
小声で指摘され、急いで腰を低くする。
その姿を見咎められたのか、エリックは一直線にマリーへと歩み寄ってきた。
ヤダ。エリック王子って、冷血で有名じゃなかった?
戦争を平和的解決へと導いた立役者であるものの、彼のいい噂は聞かない。
隠された布地から覗く両眼に見据えられたら、命がないと言われるほどに恐ろしい人物だ。
だから見目麗しい王子であるのに、相棒の聖獣が未だに見つからないのだと揶揄されている。