もふもふな聖獣に反対されても、王子は諦めてくれません
「お前が野戦病院のマリアか」
低い声に肩を揺らし、一層深く頭を下げる。
「いえ。滅相もございません。私はそのような……」
「昨日、聖獣を癒したのはお主であろう」
一層低くなる声に空気が凍り、戦慄が走る。
せい、じゅう……。
マリーは胸騒ぎがして、耳にまで届く心臓の音を煩わしく感じた。
「お前は聖獣に認められた。我々と一緒に来てもらう」
「聖獣って、もしかしてエリック様の……」
素早い動きとともに、王子が一瞬だけ動く。
次の瞬間には頬に冷たいものが触れ、目を剥き微動だにできない。
エリックの手には鞘に収められた剣。
抜かれていないとはいえ、斬りつけるような構えで頬に当てられ身の毛がよだつ。
「命が惜しければ、無駄口は叩かぬと肝に銘じておけ」
細められ見据えられた瞳はどこまでも青く澄んでいて、その美しさがより恐ろしさを増幅させる気がした。
「さあ。我々と来るんだ」