もふもふな聖獣に反対されても、王子は諦めてくれません
踵を返した王子から一時的に解放され、ひとまず息をつく。
物々しい空気の中、涙目で先輩たちに救いを求めるが、気まずそうに視線を逸らすばかり。
それはそうだ。
冷徹だと噂の第三王子。
楯突こうとするのは、命知らずだけだろう。
マリーはガックリと肩を落とし、おとなしく彼らの意向に従った。
外に出ると立派な馬車が停められており、王子が乗り込んだ後、彼の傍にいた男性がマリーに手を差し伸べた。
「あ、あなたは」
顔を見て驚いた。
昨晩ハスキー犬のところに案内をした男性だった。
第三王子直々の登場が異質で、今まで全く気が付かなかった。
「その節は大変お世話になりました。紹介が遅れました。わたくしはエリック王子の側近、イーサンと申します」
「はあ」
紹介なんてどうでもよくて、ため息が漏れる。
「どうなさいましたか?」
「その、王子と同じ馬車に?」
どう考えても差し出された手は、目の前の馬車に乗るための介助だ。
おずおずと申し出ると、首を傾げられる。
「なにかご不満でも?」
不満なら百ダースくらい並べられるわ。
そう思っても、今度は本気で剣を抜かれては敵わない。
仕方なく異論は飲み込んで、差し出された手を借り馬車の踏み台に足をかけた。