もふもふな聖獣に反対されても、王子は諦めてくれません
「回復魔法というと……殿下に、ですか?」
チラリと横に目だけを動かしたイーサンの視線につられ、王子を見ると確かに青白い顔をしている。
「あ、よろしければ、皆さんに致しましょうか」
「えっ。そんな高度な魔法を?」
勝手に魔法を使ったら、叱られるかと思って許可を取ろうとしたが、もうこのままでは胃の内容物をリバースしてしまう。
ハッキリした許可は得ないまま、両手を広げる。
「カタルシス」
本来は精神の浄化をする魔法だが、場全体を浄化したいときに範囲をイメージして使えば元のいい状態に戻せる。
マリーの広げた手から馬車の中全てが淡い光に包まれる。
ずっと外ばかりに顔を向けていた王子がこちらを見て、目を丸くしている。
やってしまったかもしれない。
王子の了承は得ていない。
浄化が終わると、イーサンが声を震わせる。
「自分自身に回復魔法をかけるのは、上級魔法です。その上、一度にその場を浄化させるのは、かなり高度な魔法のはずでは」
怒りに震えたわけではなさそうだ。
安堵して正直に答える。