もふもふな聖獣に反対されても、王子は諦めてくれません

 誰よ! 親近感が湧くなんて考えたの!

 白いシャツだけのエリックから、彼の体温を感じて落ち着かない。

 弱った姿を見ても近づかないって誓ったのに! ううん。引っ張られた不可抗力!

「少しの間、肩を貸してくれ。今日は気が滅入る予定が入っている」

「気が滅入る、ですか」

 そう言われてしまうとやはり弱い。

「ああ。人と会わなければならない。厄介な人物だ」

 肩に頭を寄せられ、体を硬直させる。

「少しだけ、このまま」

 自分より高い体温が左側に重なって、左側に全神経が集中してしまう。

 黙っていると胸の音が聞こえそうで、口早に話す。

「あの、初めてお会いしたとき、血を流して驚かせたかもしれませんが、今は元気です。無事だとわかったのですから、もう魔力を封じなくても良いのでは?」

 真っ当な考えを伝えているのに、王子は苦笑する。
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