もふもふな聖獣に反対されても、王子は諦めてくれません

「治療させていただいてもよろしいでしょうか」

 念のため確認すると、イーサンは「もちろんですとも」と席を譲った。マリーはカーティスの前まで歩み寄り、手をかざし治療を施し始めた。

 治療を終えると、幾分カーティスの顔色は良くなった。頭を撫でてやると珍しく手に擦り寄って、ペロリと舐める。

 はわわ。可愛い。いやいや、なに(ほだ)されてるの! カーティスの皮を被った王子かもしれないじゃない‼︎

 葛藤しつつ悶絶していると、「んんっ」とイーサンが咳払いをして、冷めた眼差しを向ける。

「マリー様。この後のご予定は」

「同僚に誘われているので」

 この人までエリックと親睦を深めろと言うのだろうかと、怪訝な顔をしたマリーは想像とは違う言葉を聞く。

「そうですか。ちょうどいいかもしれませんね。マリー様は城にいられない方がいい。エリック様は重要な晩餐がありますので」

 邪険にされた気がして、つい質問をする。

「どのような晩餐が?」

「エリック様の婚約者候補を一堂に介したものです」

 一瞬言葉を失い、目を丸くする。

「なにかご不満でも?」

 心の中まで見透かされそうな鋭い双眼に見据えられ、ハッと我に返る。

「いえ。滅相もありません。私、待ち合わせがありますので失礼します」

 そそくさと退室し、イーサンの射抜くような眼差しから逃れた。
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