もふもふな聖獣に反対されても、王子は諦めてくれません
カーティスの部屋に行く途中、珍しく人がいた。この人をやり過ごさなければ、部屋には入れない。
カーティスの部屋はすぐそこなのに。
先にイーサンが傍にいるから、マリーは普段通りの顔をして来てほしいと言われている。
だから敢えてケイトたちと話しながら、「今日は別の仕事だから」と言うだけに留め慌てている様子を見せないようにした。
昨日は夕方に治療魔法をかけたのに、こんなにも早く具合が悪くなるなんて。昨晩は……と考えるとエリックは婚約者候補の人たちと晩餐だったはず。
女性たちが、気の滅入る厄介な人物だって言いたいの? それはそうね。随分とおモテになりそうですし、言い寄られて大変でしょう。
もしかして、その晩餐を欠席する口実にカーティスの部屋で私と夕食を食べようとしたの? 私は王子を面倒な女性から守る防護壁代わりですかっ⁉︎
なんとなく面白くない気持ちになっていると、またひとり百面相をしていたのか、すれ違って去って行ったと思われた男性が立ち止まってこちらを見ていた。
大柄な男性は軍服を着ていて、エリックとは違う威圧感があった。
軍服もエリックが身に付けていた漆黒とも、部下たちが着ていた深い森に溶け込むモスグリーンとも違う、濃い群青色。