もふもふな聖獣に反対されても、王子は諦めてくれません

「へえ。きみ、面白いにおいをさせているね」

「えっ。昨日、ちゃんとお風呂に入りましたよ」

 スンスンと自分の腕や体を嗅いでいると、片眉を上げ、からかうような声色で言われる。

「珍獣が好みだったとは、知らなかったな」

 彼は挑戦的な眼差しを細め、口の端を上げる。そうして近寄られ、本能的に後退る。

「聖獣の加護って、力が同等かそれ以上の者には効かないって知ってる?」

 ドクンと胸が波打って、できる限り表情に出さないよう努める。

 どうして聖獣の加護について、初対面のこの人が知っている口ぶりなの? エリック様のお友達⁉︎ まさかこんな人、私だったら頼まれたって友達になりたくないわ。

「番の契り、俺とも結べるのか試してみようか」

 ニヤリと笑った口から覗く犬歯が目に入って、ゾワリと恐怖が這い上がる。

「ワイアット‼︎ なにをしている!」

 怒号にも似た声で呼び止められ、ワイアットは両手を上げ降参のポーズをとる。

「いいや。まだなにも」

 まだって、今からなにかするつもり満々だったってことでしょー‼︎

 遅れて登場するヒーローみたいに、エリックはワイアットとマリーとの間に割って入る。
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