もふもふな聖獣に反対されても、王子は諦めてくれません

 どうして?
 こんなにひどいだなんて、もっと早くから回復魔法をかけていれば……。

 もう一度、力を込め強い光に包まれ始めると、大きな声で呼ばれた。

「なにをなさっているんですかっ!」

 いつの間にか現れたイーサンが無理矢理にマリーとエリックを引き剥がす。

「嫌っ。やめてください。まだ生き返るかもしれない!」

「あなたこそおやめなさい。急いでこちらに」

 治療魔法しか芸のないマリーは簡単にイーサンに(かか)え上げられ、荷物のように運ばれる。暴れても無情にも連れられる。

 どうしてっ!

 涙でぐちゃぐちゃになった顔で、離れていくエリックを見つめ続ける。(かす)んで揺れて、形なんてわからない。

 イーサンは部屋の中ほどにある扉を開け、マリーと一緒に扉をくぐる。一瞬、内臓が置いていかれた移動魔法の気持ち悪さを感じた後、カーティスの部屋の中にいた。

「早く、カーティスに治療をっ!」

 ()き立てるイーサンに、割り切れない気持ちをぶつける。

「エリック王子は? だってまだっ」

 頭ではわかっている。王子は助からないのだろう。それならばまだ助かる見込みのあるカーティスを助けるのが、治療士の役目だ。

 だからって、つい数分前まで話していた王子。助けられた命を……。
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